オメガ3とガン: EPA対アラキドン酸の比率が低くなると、死亡リスクが高まる。

日本人の人口調査は、血清中のエイコサペンタエン酸 対 アラキドン酸(EPA:AA)濃度が低いほど、ガンによる死亡リスクが上昇することを示唆している。

この関連性は、他の交絡するリスクファクターの調整後でさえも依然として堅固であった。特に、肝臓癌による死亡リスクは、血清EPA:AA比が低いほど有意に増加した。

対照的に、研究者らは、血清ドコサヘキサエン酸とアラキドン酸(DHA:AA)比とガンによる死亡との関連性の明確な証拠は見いだせなかった。「私たちが知る限りでは、これは血清EPA:AAレベルの減少がガンによる死亡の独立したリスクファクターであることを示す最初の報告である」と、研究者はJournal of Epidemiologyに記した。

「これらの知見は、EPAが豊富な食品の定期的な摂取が、一般の日本人のガンのリスクを低減するのに有効である可能性があることを示唆している。」

研究者らは、オメガ3のPUFA摂取とガンリスクとの関連性を検討した研究で、かつて相反する結果があったと指摘した。

限られたエビデンス

何例かのシステマティック・レビューでは、大腸ガンを予防する上で、食事から摂るオメガ3 PUFAの果たし得る役割の可能性に関する限られた証拠が得られたが、決定的な証拠は得られなかった、多くはないがいくつかの縦断的観察研究では、魚またはオメガ3 PUFAの食事摂取と、結腸、乳房、肺および肝臓ガンなどの部位特異的なガンのリスクとの間に逆相関が見られた。

この研究論文は、福岡市郊外の久山町で現在も進行している人口ベースの疫学研究である久山町研究に関連している。

久山町の人口は約8,400人で50年間安定しており、町の人口の年齢や職業分布は全国平均とほぼ同じである。

この町で3,328人の住民によるスクリーニング検査が2002年と2003年に行われた。被験者は、スクリーニング試験の日から2012年11月まで、平均して9.6年間観察を受け、期間中、121人の被験者(男性73人、女性48人)がガンで死亡した。

すべてのガン死亡は、医療記録を含む全臨床データのレビュー、各被験者の血清脂肪酸レベルを知らされていない研究陣パネルによる剖検所見を含む理学的検査に基づいて裁定された。

潜在的なメカニズム

研究者らは、年齢および性別によって調整されたガン死亡率が、より低い血清EPA:AA比レベルで増加することを見いだした(P<0.05)。

変量補正分析では、血清EPA:AA比の第1四分位の被験者は、第4四分位群よりも1.93倍(95%信頼区間、1.15-3.22)高いガン死亡率を示した。

研究者らは、いくつかの作用機序が、発ガンおよびガン増殖に対する上昇した血清EPA:AA比率の潜在的な予防効果の主要因であると書いている。

この論文は、EPAがAAと競合することによって炎症反応の抑制において重要な役割を果たすことに注着目している。さらに、AA由来のエイコサノイド自体は、いくつかの生物学的プロセスを介して癌細胞の増殖および進行を促進するのに反して、EPAはフリーラジカルや活性酸素種の減少、インスリン感受性の増強、エストロゲン代謝の調整などにより、他の抗腫瘍形成効果を発揮すると書いている。

これらの知見は、EPAとAAとのバランスがメディエーターの産生と、その後の発ガンおよびガン増殖の抑制に重要であるという仮説を裏付けている。

さらに、EPAはガンの発症に重要な役割を果たしている可能性がある。なぜなら、AAではなくEPAはガンのリスクと関連する傾向がある。

論文は、分析結果は血清DHA:AA比率ではなく、低いレベルの血清EPA:AA比率が高いガン死のリスクと有意に関連していることを示した。

「とりわけ血清EPA:AA比は、肝臓ガンによる死亡リスクと関連している可能性が高い」と付け加えた。

「これらの知見は、EPAが豊富な食品の定期的な摂取がガンのリスクを軽減するのに有効である可能性があることを示唆している。さらなる大規模な前向きコホート研究が必要となるだろう。」

出典:Source: Journal of Epidemiology

J Epidemiol. 2017 Dec; 27(12): 578–583.

"The ratio of serum eicosapentaenoic acid to arachidonic acid and risk of cancer death in a Japanese community: The Hisayama Study"

(日本の一コミュニティにおける血清エイコサペンタエン酸とアラキドン酸の比率とガン死亡のリスク:久山町研究)

著者:Masaharu Nagata等