発酵プロバイオティック飲料が潰瘍性大腸炎に及ぼす影響は限定的であることが判明:日本の研究

プロバイオティクスを含有する発酵野菜飲料は、潰瘍性大腸炎(UC)患者の腸に対するメリットはあるが、UC自体に対しては有益ではない。

これは、滋賀医科大学の研究者が、軽度から中等度までの活性型UC患者11人に対して、Pediococcus pentosaceus菌株(IDS885)を含む発酵性植物飲料を用いた研究の主要な発見であった。

患者は無作為に2つのグループに割り当てられた:グループAの6人の被験者は、参加直後の8週間にわたって飲料を摂取したが、グループBの残りの5人の被験者は8週間の観察期間を経て、次の8週間 飲料を摂取した。

最終的に、7人の被験者(グループAでは5人、グループBでは2人)が消費レジメンを完了した。

腸のメリット

研究者らは、Rachmilewitzの臨床活動指数を用いて、すべての被験者を評価した。指標のスコアが少なくとも1ポイント低下した患者はレスポンダーと呼ばれ、スコアが上がるか変化しない場合はノンレスポンダーと呼ばれた。

こうした事にもかかわらず、治療期間の前後にRachmilewitz臨床活性指数またはUC内視鏡的重症度指数に有意な変化は観察されなかったと報告した。

しかし、被験者は発酵飲料を8週間消費した後は軟便症状を減少させることが判明した。

酸と微生物

有機酸分析により、レスポンダーは、ノンレスポンダーよりも高いレベルの酢酸、n-酪酸およびプロピオン酸、およびより低いレベルの乳酸を有する傾向があった。

これは健常人とUC患者を比較した以前の知見  前者は乳酸以外のすべての酸のレベルが典型的に高かったと事 と一致していた。

興味深いことに、レスポンダーは飲料を摂取する前でも酢酸、n-酪酸およびプロピオン酸のレベルが高く、乳酸のレベルが低かった。

これは施療前に示唆されたが、レスポンダーの腸内環境は、ノンレスポンダーと比較して、健常人の環境に既に類似していた

さらに、腸内微生物分析により、レスポンダーのビフィズス菌の占有率は, 特に飲料の摂取後より低い傾向にあることが判明した。

別の研究ではUC患者の乳酸の増加源はビフィドバクテアであるという仮説を立ていたが、今回の所見は、UC患者に関する初期の研究の所見と一致した。

研究者らは「これらの知見を考慮すると、発酵した植物性飲料の消費は腸内環境を改善する可能性がある」と記している

サイズと重要度

果物、植物および発酵食品および飲料を含む様々な供給源に由来するプロバイオティクスは、UCおよびクローン病などの炎症性腸疾患の治療にしばしば用いられる。

UCやその他の胃腸障害に対するプロバイオティクスの一般的な効果は広く研究されているが、この研究は少数の患者が対象であったため、単一中心性が限界であると述べている。

これは、レスポンダーとノンレスポンダーの間の統計的有意性が検出できなかったことを意味した。

研究者らは、「発酵した野菜飲料は、UCの活動は改善しなかったが、緩い糞便症状を緩和するように見えた。さらなる臨床事例データの取得が、本知見を確認すると期待される」と結んだ。

出典: Biomedical Reports

https://doi.org/10.3892/br.2018.1099

"Effect of fermented vegetable beverage containing Pediococcus pentosaceus in patients with mild to moderate ulcerative colitis"

「軽度から中等度の潰瘍性大腸炎患者におけるPediococcus pentosaceusを含む発酵野菜飲料の効果」

著者:Shigeki Bamba等