葉酸の補給は日本人高齢者の認知機能を向上させる可能性がある-さらなる研究の必要性

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2カ月間の葉酸補給により、葉酸欠乏症で軽度の認知機能障害を持つ患者の認知機能が改善される可能性がある。

日本の研究者が、葉酸を補給することで、ミニメンタルステート検査(MMSE)の平均点が20.1点(ベースライン)から22.2点に有意に改善されることを明らかにした。

MMSEは神経心理学的検査で、25~30点が認知症なし、20~24点が軽度認知症、13~19点が中等度認知症を表す。

研究者らは、この改善は葉酸がホモシステイン(Hcy)レベルを低下させる能力を持っているためではないかと述べている。

方法論

本研究には、福井大学医学部附属病院および中村病院の認知症外来から、葉酸欠乏症(3.6 ng/mL未満)および認知機能障害(平均MMSEスコア20.1±4.7)を有する患者45名(平均年齢79.7歳)を募った。

ベースライン時の葉酸の平均濃度は2.7±0.6ng/mL(正常範囲3.6~12.9)、Hcyは25.0±18.0nmol/mL(3.7~13.5)、ビタミンB12は558.4±406.5pg/mL(233~914)であった。

参加者は、日本製薬から提供された葉酸サプリ(フォリアミン錠、葉酸5mg)を2カ月間、毎日摂取した。

血液サンプルを採取して葉酸とビタミンB12のレベルを評価し、28日目と63日目にMMES検査を実施した。

認知力スコアの向上

葉酸投与後の平均MMSEスコアは、20.1±4.7から22.2±4.3に有意に変化した(p<0.001)。

平均葉酸値も2.7±0.6 ng/mLから173.3±257.2 ng/mLへと有意に上昇した(p<0.001)。

平均Hcy値は、葉酸補給後、25.0±18.0から11.0±4.3nmol/mL(p<0.001)に有意に低下した。

HcyはDNAの破壊、酸化的損傷、アポトーシスを引き起こし、Hcyの高値は酸化ストレスの指標となる。加えて酸化ストレスは、注意と認知において重要な役割を果たすことが提唱されているメチオニンシンターゼ活性を阻害する。

葉酸補給による認知機能の回復に関する研究は限られているが、研究は葉酸欠乏と高ホモシステイン血症との関連を報告している。

​研究者らは、MMSEスコア改善の可能性の1つは、葉酸がHcyレベルを低下させる機能を持っていることが挙げられると述べている。

葉酸補給により、短期的には葉酸欠乏症の患者の認知機能が改善する可能性があるが、認知機能の改善には、運動効果やプラセボ効果、葉酸による気分の改善など、いくつかの効果を考慮する必要があると説明している。

​加えて、この研究では対照群を置かなかった。​「葉酸欠乏症ではない同様の状況/カテゴリーの他の患者を対象としたランダム化試験を実施しなければ、葉酸が認知症スコアを改善したものであり、患者に実施された他の何らかのケアではないと自動的に仮定することはできない。」

​本研究では、短期状態の指標である血清葉酸のみを測定した。​研究者らは、長期的な状態の指標である赤血球 (RBC) 葉酸濃度の測定に加えて、認知機能低下を経験している高齢成人を対象とした今後の試験を推奨している。

「本研究では、葉酸値のみを測定したが、葉酸を多く含む食事を2~3回、および/または葉酸(ビタミン)を摂取すると正常値まで上昇することがある。もしRBC葉酸値が測定されていれば、より多くの葉酸欠乏症の患者が見つかったかもしれない。これは今後の研究で行うべきである。」

​加えて、本研究は日本で実施されたもので、この知見は小麦粉の葉酸強化を政府が義務付けている国には国には当てはまらないかもしれない。

 

出典:Nutrients

https://doi.org/10.3390/nu12103138

「葉酸欠乏および認知障害患者におけるホモシステインおよび認知に対する葉酸補給の

影響」

著者:Yuka Hamaら