機能性成分、ミルクベース、オーガニック強調表示で競合する乳児用調製粉乳業界 - Growth Asia専門家パネル

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Growth Asia Series 2021に参加した専門家によると、乳児用調製粉乳メーカーは、ヒト母乳オリゴ糖(HMO)、山羊ミルクや羊ミルクなどのさまざまなミルクベース、オーガニック表示の確保など、新しい機能性成分を模索しているという。

今年のGrowth Asiaシリーズでは、乳幼児と母性栄養が最後のテーマとなった。これまでに取り上げたトピックには、健康的な加齢に関する2つのエピソードがあり、それぞれ認知機能と運動機能の健康、代謝機能と消化器系の健康を取り上げた。また、植物由来のイノベーションとヘルシースナッキングに関する2つのトピックもあった。」[オンデマンド視聴はこちら]

最終回では、ダノンのオープンサイエンスリサーチセンター長のGregg Ward氏による基調講演、森永乳業のリサーチアソシエイトであるChyn Boon Wongさん、IFFの幼少期栄養セグメントリーダーであるDr Sigalit Zchutによるスポンサープレゼンテーションが行われた。

また、Wong氏、Dr Zchut、TurtleTree社のチーフ・ストラテジストであるMax Rye氏、Whole Kids社の創業者兼CEOであるMonica Meldrumさん、PharmaCare Laboratories社の中国マーケティング部門責任者であるAiring Wangさん、Li, Page & Co社の創業者兼プリンシパル・コンサルタントであるJane Liさんによるパネルディスカッションも行われた。

今回のイベントで共通して語られたのは、乳児用調製粉乳メーカーが競合他社との差別化を図るために、新しい機能性成分やミルクベース、製品の謳い文句など、さまざまな選択肢を模索しているということであった。

COVID-19が感染拡大して以来、企業がどのようにイノベーションをおこなってゆくかにおいて、人生の幼少期段階で免疫システムをサポートする成分の関連性が高まっていると、基調講演を行ったWard氏は述べている。

その例として、プロバイオティクス、ポストバイオティクス、プレバイオティクスとしても機能するHMOなどが挙げられた。

「HMOは、まさに母乳の奇跡の一つです。ヒトの母乳に、1リットルあたり5〜15グラムの範囲で多様に存在しています。」

「これは研究と革新のエキサイティングな分野ですが、すべての市場プレーヤーとサプライヤーの技術的能力は、完全な多様性、そして重要なことに、HMOの用量をまだ完全に再現することはできません。」

同氏によると、ダノン社は48年以上にわたり、短鎖ガラクトオリゴ糖(GOS)や長鎖フラクトオリゴ糖(FOS)のプレバイオティクスをはじめとするヒト母乳の研究を行っており、昨年には中国で新処方のAptamil Essensisも発売している。

「私たちは、Aptamil Essensis の持つ利点に、ポストバイオティックス用の2’-FLや3’-GLのような新しい同一のHMO構造のいくつかを加えて、ヒト母乳の関連性の範囲内で1リットル当たり9グラムを超える用量を供給しました。これは常に基準となるゴールドスタンダードです。」

また、プレバイオティクスとプロバイオティクスの組み合わせであるシンバイオティクスの利点を生かすために、プロバイオティクス菌であるビフィズス菌BBM-16Vを乳児用製品に配合した。

また、昨年には、抗生物質を使用せずに、授乳中の母親やこれから母親になる人の乳腺炎を最大59%防ぐプロバイオティクスを発売した。

森永乳業のWongさんは、プロバイオティクスの使用について、乳児用栄養製品にヒト常在性ビフィズス菌(HRB)を使用することの重要性を強調している。

「研究によるとB.longumB.breveB.infantisなどのHRB種は、非HRB種に比べて多くの生理学的な利点があることが研究により判明しています。」

乳幼児の健康をサポートすることが臨床的に証明されているHRB株には、B.longum BB536、B.breve M-16v、B.infantis M-63などがある。これらの菌株は、上気道感染症、アレルギー予防、乳児疝痛などの症状を緩和することが示されている。

Ward氏は今後の研究について、「腸-乳房軸のような新しい科学的概念もあり、世界やここ中国のリーダーたちと協力して探求を続けています」と述べている。

同様に、TurtleTree社のRye氏は、乳児栄養における「聖杯」は、HMOや人間の母乳に含まれるその他の成分を理解し、乳児栄養製品に取り入れることであると述べた。

シンガポールに拠点を置く彼の会社は、ボランティアから採取した幹細胞を使って、乳汁を分泌する乳腺を作り、母乳を開発することで、乳児の栄養に取り組んでいる。

異なるミルクベース

別の方面で、各社が競っているのは、a2ミルク、羊ミルク、山羊ミルクなど、異なるミルクベースの使用である。

「ここ数年人気のある特別な素材以外にも、羊ミルクや山羊ミルクなど、他の代替ミルクベースへの転換が見られるようになりました」とLi, Page and Co.のLiさんは語る。

彼女の知る限りでは、水牛のミルクやラクダのミルクを研究している企業もあるようだ。

「イノベーションという意味では、企業が差別化のためにどれだけ努力しているかが問われる分野だと思います。」

羊ミルクの調製粉乳を製造している企業には、ニュージーランドのBlue River Dairy社があり、山羊ミルクは、H&H社のBiostime、Nuchev社のOli6、Danone Nutricia社のKaricareなどがある。

今後の研究

最良の結果を得るためには、最適な投与形態やデリバリーシステムの研究を行う必要がある。

「例えば、ラクトフェリンの場合、どのような形態が良いのでしょうか?液体なのか、粉末なのか、それともグミなのか。」子供用サプリメントブランドNature's Wayを運営するPharmaCare LaboratoriesのWangさんはこう語る。

「この業界では、特定の人種に見られる栄養欠乏症の研究が不足しています。例えば、中国の南部と北部ではどのような栄養欠乏症が見られるのか、機能性成分が異なる剤型で作られた場合、どのように異なる結果をもたらすのか、などです」と付け加えた。

サプリメントのおやつ化が子供たちにとって魅力的になってきているので、製品剤型の研究は非常に重要となる。

これは、Nature's Wayがグミやチュアブル・徐放性製剤のサプリメントを導入した理由でもあり、同時にこれらの製品では添加物や砂糖の使用量を減らしているとのこと。

オーストラリアのオーガニック子供用スナックブランド、Whole KidsのMeldrumさんは、科学的根拠の重要性を強調し、特に腸の健康について述べた。

「ミレニアル世代の親御さんたちは、自分たちの両親からではなく、他の先輩ママたちから多くの情報を得ており、彼らが求めているのは、健康上のメリットや質の高い栄養だけでなく、クリーンな食品であることがわかります。

「彼らはブランドの背後にも目を向けていて、純粋な製品の特性や利点だけでなく、ブランドが持続可能性の観点から何を提供しているかにも注目しています」と彼女は語った。