シチコリンの補給が高齢者の記憶力を向上させる-協和発酵バイオが資金提供した12週間のRCT

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協和発酵バイオ株式会社が実施した12週間のRCTにより、シチコリンの補給が、高齢者のエピソード記憶と全体記憶を有意に改善することが示された。

エピソード記憶とは、いつ、どこで、何に出会ったかなど、特定の出来事を記憶し、思い出す能力で、年齢とともに低下する傾向がある。

シチコリンは、シトシン、リボース、ピロリン酸、コリンから構成される天然のモノヌクレオチド。

脳の代謝を高め、中枢神経系のドーパミン濃度を増加させ、リン脂質の再合成を促進して細胞膜を保護することで、神経防護作用を発現すると言われている。

既存のヒト臨床試験において、シチコリンの補給は中年女性や思春期男性の注意力を向上させることが示されている。

研究者のグループがThe Journal of Nutrition誌に投稿した論文によると、シチコリンは50歳から85歳の高齢者の記憶力を改善する可能性があるという。

本研究には、加齢に伴う記憶障害(AAMI)を持つ99人が参加した。

1日あたり250mgのシチコリン(商標名:コグニジン)を含む2つのカプセル、またはプラセボを無作為に12週間与えられた。試験材料は協和発酵バイオから提供された。

試験の途中と終了時に認知機能の評価を行った。

結果

シチコリンの補給は、介入群のエピソード記憶をベースライン時および試験終了時から有意に改善した。介入群はプラセボ群よりもエピソード記憶が有意に優れていた。

その結果、介入群では、12週目に、エピソード記憶を評価するためのテストである対連合学習課題のスコアがベースラインから有意に上昇していた。

また、介入群の全体的な記憶力は、プラセボ群と比較して大きく向上していた。

この結果は、シチコリンを定期的に摂取することは安全であり、加齢による記憶障害に対して有益である可能性を示唆している、と研究者は述べている。

「シチコリンを摂取した被験者は、プラセボを摂取した被験者と比較して、対連合学習課題を用いて評価したエピソード記憶、および複合記憶スコアを用いて評価した全体記憶において、有意な改善を示した」と研究者らは述べている。

この研究は、日本のキリングループの子会社である協和発酵バイオがスポンサーとなって行われた。

また、500mgのシチコリンを毎日補給し、高齢者の記憶力に及ぼす影響を調べた初めての試験と言われている。

出典:The Journal of Nutrition

https://doi.org/10.1093/jn/nxab119

「健康な高齢者におけるシチコリンと記憶機能。無作為化、二重盲検、プラセボ対照の臨床試験」

著者:Eri Nakazakiら